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多摩中心に活動する管理人の撮影ブログ。(since 2007.4.1) 2020年からは西日本に移動。
今回は萩山駅と小平駅の変遷を見ていく。
またしてもとても長くなってしまった。

まずは両駅の歴史から。Wikipediaおよび市史編さんこぼれ話より。

1927.04.16 旧西武鉄道村山線高田馬場(仮)駅-東村山駅間開業に伴い小平駅開業
1928.04.06 多摩湖鉄道の終着駅として萩山駅開業
1928.11.02 多摩湖鉄道萩山駅-小平駅間開業
1929.04.16 多摩湖鉄道小平駅を本小平駅へ改称。
1930.01.23 多摩湖鉄道萩山駅-村山貯水池駅間開業
(いつデルタ線になったのかは不明)
1945.09.22 多摩湖線を経営する武蔵野鉄道が村山線を経営する旧西武鉄道を吸収合併
1949.11.15 本小平駅が小平駅に統合
1955.03.18 萩山駅-小平駅間直流1500 V に昇圧
1958.09.16 萩山駅を多摩湖駅方面へ300 m 移転
1961.09.21 国分寺駅-萩山駅間直流1500 V に昇圧
1962.09.01 萩山駅-小川駅間開業に伴い萩山駅-小平駅間が上水線に編入
1967.11.07 萩山駅-小平駅間複線化



1941.06.25
写真西側の萩山駅から見ていく。
南から来た線路はY字に分かれ、北西方向と北東方向へ伸びている。
北西方向と北東方向の線路同士も接続されており、デルタ線が形成されている。
デルタ線の中央には北西方向からの引き込み線が存在し、車庫となっている様子。
市史編さんこぼれ話によれば、Y字に分かれた直後に台形のだだっ広いホームがあるとのことなので、
デルタ線の内側にホームがあると考えられる。
北東方向へ伸びた線路はすぐに村山線の線路と並走し、交わらないまま行き止まりとなっている。
これが本小平駅で、道路を挟んで村山線の小平駅が確認できる。


1944.06.25
画質が悪く見えにくいが、1941年から大きな変化は見られない。


1947.11.14
萩山駅には、多摩湖方面に2面2線の対向式ホーム、本小平方面に1面1線のホームが見える。
市史編さんこぼれ話にあるような台形のホームがデルタ線内側にあるかどうかは確認できない。
会社は合併し、村山線、多摩湖線ともに西武鉄道となったものの、
小平駅は本小平と小平で分かれたままである。


1948.3.29
植物の葉が落ちたせいか線路など見やすい。1947年から大きな変化は見られない。


1956.4.13
萩山駅のデルタ線内側のホームが台形のように見える。
またホーム構造は変わらないものの、国分寺と小平を結ぶ東側の線路のY字分岐が消滅したように見える。
1955年に萩山駅-小平駅間が直流1500 V に昇圧したためか。
小平駅は新宿線と統合され、本小平駅が消滅した。
多摩湖線用ホームは道路を渡ったすぐに設置され、新宿線と駅構内で接続された。


1961.9.5
萩山駅が北西300 m 先、現在の位置に移設された。
国分寺駅と小平駅を結んでいた東側の線路は完全に撤去された。
旧萩山駅の西側ホームは撤去されたが、東側の台形ホームは健在。
デルタ線に囲まれていた車庫も健在。
小平駅は、多摩湖線ホームが長くなった。


1974.12.26
旧萩山駅跡地は建造物が建った。デルタ線を形成していた東側の線路跡地は道路になった。
また、萩山駅-小平駅間が複線化している。
一方で車庫は健在。
小平駅は橋上駅舎に生まれ変わった。


1984.10.26
旧萩山駅跡地は1974年同様建物が建っている。車庫が消滅した。
小平駅は1974年のまま。


1989.11.3
1984年から大きな変化は見られない。


1992.10.10
1989年から大きな変化は見られない。
旧萩山駅付近にちょうど4両編成の列車が走行中であることが確認できる。


2008.5.21
旧萩山駅跡地付近に線路が敷設された。
現萩山駅の北側の線路(拝島線上り)から多摩湖線国分寺駅方面へ連絡するための線路が新たに敷設された。
現在旧萩山駅跡地は萩山保線区となっている。

以上、写真は航空写真は国土地理院ウェブサイトを出典とし、加工して作成した。


★多摩湖鉄道と旧西武鉄道村山線の因縁
1928年、小平周辺の開発を目論んだ箱根土地株式会社が多摩湖鉄道を開通させた。
村山線の開通は1927年とほぼ同時期であり、当然敷設にあたり双方のすり合わせがあった。
市史編さんこぼれ話によれば、旧西武鉄道は自身が保有していた吉祥寺駅-箱根ヶ崎駅間(村山軽便鉄道)の敷設免許を理由に、それを跨ぐ多摩湖鉄道の敷設を渋った。
この後鉄道省の調整により、多摩湖鉄道は国分寺駅-萩山駅間に無事工事認可申請書を提出することになり、萩山駅で村山線と接続を図った。
この萩山駅は、1941年の航空写真の中の横に走る一直線の道(多摩湖から境浄水場に走る水道管の道、現多摩湖自転車道)のやや北側に設置される予定だった。
しかし、旧西武鉄道は村山線のルートを北方へずらし、多摩湖鉄道を避けた。
村山線が小平駅を出た直後に右へカーブしているが、恐らくカーブせずに直進したときの交点が萩山駅だったのだろう。
多摩湖鉄道は萩山での接続を諦め、当初の目的地である多摩湖へ向かいやすいように、
やや南側、江戸街道(デルタ線の内側を左右に横切る道)を渡る前の地点を萩山駅とし、そこから分岐して小平駅での村山線との接続を図った。
しかし小平駅の協議についても多摩湖鉄道と旧西武鉄道は衝突した。
その結果駅は別々となり、道路と踏切を跨いだ位置にそれぞれの出入り口が設置された。
1941年の航空写真からは、鉄道敷設の際の旧西武鉄道が多摩湖鉄道をどう見ていたのかがよく伝わってくる。

★多摩湖鉄道敷設時に力を見せつけた旧西武鉄道が多摩湖線を保有する武蔵野鉄道に陥落
1915年に武蔵野鉄道(現西武池袋線)が全線開通したが、
多摩地域の沿線開発に目を付けた箱根土地株式会社は1924年に大泉学園を開発、駅の提供を行い、1925年に武蔵野鉄道の株式を取得するなど、
箱根土地株式会社、武蔵野鉄道の両社は少なからず関係を持っていた。
村山線の開通はその直後、1927年である。
高田馬場から東村山まで線路を引いたことで、もともと保有していた川越線へ直通運転を開始し、現在の運行体型(国分寺線と新宿線)が確立した。
川越、所沢、高田馬場を直通させた旧西武鉄道は、飯能、所沢、池袋を結ぶ武蔵野鉄道と所沢駅で乗客の奪い合いを繰り広げた。
旧西武鉄道の駅員が武蔵野鉄道の車掌を殴ったり、武蔵野鉄道の幹部が駅員を連れて旧西武鉄道所沢駅へ殴り込んで運行業務を乗っ取ろうとしたり、かなり激しい争いが記録に残っている。

ただし、村山線開業当初の所沢駅の管轄は川越鉄道を引き継いだ旧西武鉄道が担っていた。
多摩湖鉄道敷設のエピソードにもあるように、力関係は完全に旧西武鉄道>武蔵野鉄道・多摩湖鉄道であった。

また、武蔵野鉄道は事業力の無さから1920年代から粉飾決算をするほど経営が厳しく、世界恐慌も相まって最終的に経営が破綻することとなった。
ここで経営再建を担ったのが箱根土地株式会社である。
1932年には筆頭株主となり経営権を奪うと、これまで武蔵野鉄道が手薄だった沿線開発や徹底的な債務整理に取り組んだ。
更に多摩地域は軍需工場の設置も増加するなど、周辺環境が好転したことで一気に業績は回復した。
箱根土地株式会社の元で急激に立て直した武蔵野鉄道は、1940年に多摩湖鉄道を吸収合併した。

そのような中でも旧西武鉄道と武蔵野鉄道はやはり犬猿の仲であった。
1940年の武蔵野鉄道列車衝突事故では、旧西武鉄道の駅職員が意図的に信号を操作し、運行を妨害したのではないかという憶測が流れるほどだった。
10年やそこらで人間は変わらない。

しかし箱根土地株式会社をバックに据えた武蔵野鉄道は力を増し、両社の力関係は10年でガラッと変わった。
1943年には旧西武鉄道の経営権を箱根土地株式会社が取得し、
戦後には多摩湖鉄道を吸収合併した武蔵野鉄道が、村山線を保有する旧西武鉄道を吸収合併した。

現西武鉄道、名前には「西武」を冠しているが、ホームページの歴史・沿革を見ると、
武蔵野鉄道設立の1912年を始まりとしている。
川越鉄道開通には触れられておらず、物事は武蔵野鉄道の視点から描かれていることからも、その立場は明らかである。


以下を参考とした。
・西武鉄道の成立 武蔵野の大地に王国を築いた堤康次郎
https://maonline.jp/articles/seibu_tsutsumi
https://maonline.jp/articles/seibu_tsutsumi_2
・1930年代における武蔵野鉄道の債務整理問題, 神山恒雄, 明治学院大学経済研究, 157, 19-42 (2019)
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